夢をみた。
荒野に、戦士たちの死体がある。
怖いなあ、と思いながら近寄ってみると、それは石膏像で、
歩いていたら草が生えてきた。
大地には、大きな大きな12階建てのアトリエが建っていた。
アトリエの螺旋階段をめぐっていると
見たこともないような美しい部屋にたどりつく。
そこはだれにも見せたことがない
秘密の絵を描く場所だった。
花があって本があって
かすれた白いキャンバスたちがあって
静かな空間には猫がいた。
他の階にいってみると、
膨大な図書館のような本棚たちがずらーっと並んでいて
あふれた本が床にまでたくさん、箱の中にもたくさんあり
これからどこに整理しようか?と、画家たちが話し合っている。
一階には生徒さんがくる教室のアトリエがあり、
そこにはあじさいとキャンバスが咲いて
みんなが楽しそうにあちこちからやってきていた。
わたしはその入り口にある、イーゼルに乗ったキャンバスに
「どうぞお入りください」と絵と文字を書いた。
はっと目が覚めた時
「あんな美しいアトリエは見たことがない」と思った。
静かでひたひたした気持ちがわいていた。
その日の昼間にポストをみたら、
偶然にも、画家の友達からお手紙が来ていた。
切手がはっていないから、直接置いていってくれたんだな。
「けいこさん、こうじさんへ」
封筒を開けてみると、そこには熱のある文字が、びっしりと書かれていた。
ざらっとした感触。便箋をさわってみると、しゃべっている彼の言葉が浮き出てくるようで、「ああ、やっぱり手紙っていいな・・・」と思った。
書かれていたのは、悔しかったあの時のこと。
ラグビー見ながらなんとなく泣いてるような日もあったよね。
それでも、挑戦し続けて、挑戦し続けて、誰も恨んでない。
アートに経済を加えて、これからを開こうとしている。
「出店も筋トレやと思ってやってみたら」と夫が言ったのがきっかけで、ここまでやってこれたって。ありがとう、と書かれていた。
涙が出てしまったんだけど、彼は、ほんとに素直なんだよね。
どろどろの気持ちがあるときも、それをひとに向けることなく、自分自身のこととして正面からタックルしていく。苦しみと正面から向き合っている。
だから人にも好かれるし、周りの人が応援したくなるんだよ。
かっこ悪くてもかっこよくても、関係なくそこにいる。
わたしたちは、夢みたい。
あの石膏像みたいに、自分のことを、死んでいるのか生きているのかわからない、あやふやな存在だと思う日がある。理由があるのかないのか、もう一秒もこの空白や孤独に耐えられない、そんな瞬間もある。
けれど、一回壊れたとしても、苦しみと向き合いながら「また描けるんだな」って、彼を見ていて思う。あやふやだからこそ、瞬間瞬間変化し、自由になんでも描ける。
・・・・
すごいなあ、と思って翌日クッキーを持ってアトリエをのぞいた。
「けいこさん、久し振り!よく来てくれたねえ」と迎えてくれたんだけど、そこにはお供え物かのように、みんなから差し入れのお菓子が並んでて、笑ってしまった。
よく考えてみたら、お金があるとかないとか関係なく、
アーティストの友人たちはアトリエを持っている。
なんで?
たぶん、それが人生に必須のものだから。
そして、彼らがいるその空間が、アトリエになるから。
ひとつひとつ色をぬって、重ねて。
色を塗る作業をしているそばで、仕事の話、恋愛の話、地域のこと、とりとめもなく話して。
ふらりとやってきて、気がついたら、夕暮れが差していて「バイバイまたね」と帰ってゆく。
小さな頃からそこに救われ、そこで育ってもらったけれど、今もこうやって、訪ねていけるアトリエがあることは、幸せだ。
・・・
アトリエは家でもない、お店でもない空間。
空白から何かが生まれ、
死んで生まれてを繰り返す場所。
子どもにも、大人にも。
そんなアトリエみたいな心の場所、現実の空間を広げたい。
そしてひとつだけ、自分のための秘密のアトリエも、そっと残しておこう。
◾️ヒビノケイコのプロフィール・執筆&講演履歴と依頼はこちら
■ヒビノケイコ4コマ新聞のFacebookページやツイッターでは、ブログ記事で書いていない情報も発信中!
はじめての方で「いいね!」と思っていただけましたら、一押しお願いします。
◾️2刷目再発売、よく売れてます。都会から山奥へ、30代移住9年目。田舎暮らし、起業、子育て、地域のお付き合い。楽しさも悩みも、すべてつめこんだエッセイ漫画。
◾️「ヒビノケイコが最近読んだ本10冊」
◾️「ヒビノケイコが愛用するキッチン道具Best10」日本の老舗の逸品~最近のヒットまで
◾️自然派菓子工房オーナーとしてオススメする「質の良いお菓子材料・サイトまとめ」
◾️私がオーナーをしている自然派菓子工房「ぽっちり堂」山の素材で手作りした優しいお菓子ギフト・内祝いを全国通販してます。


