2015年10月、テレビに出てから、私のリズムはやっぱり変わっていたと思う。ヒビノケイコさんに言ったのだけれど、期待される自分と、見せたい自分と、本当の私。少しずつ距離ができて、苦しい箇所が出てくる。

土台は幸せなのだからと。自分が好き好んで選んだことばかりに囲まれているのだからと。そうは言っても、1日は24時間しかなくて、今週も来週も、締切はやってくる。

締切が辛いのではなくて、締切があると、それしか考えられない自分。

突き進むことだけは得意だから、目標があると、そこにまっすぐ向かえる。逆に言えば、目標があるときは、余計なことが、できない。
 
 

出典:女齢30前にして、ハワイ1人旅10日間に行ってきた時の話。


わたしたちは、テレビの中で、出会ったのかもしれない。ふとつけたテレビに出ていた佐野知美さんは、キラキラしていて、順風満帆。そんな風にうつるwebメディアの編集長。


いつも思うのだけど、体感は違う。実際にその人に会ってみて、感じる雰囲気。感じるもの。


 



秋のはじまり。

東京からやってきた佐野さんが、がらりと障子を開けてうちの古民家に入ってきた。
「初対面で緊張します・・」と言いながらも、しょっぱなから突っ込んだ話をしてくる。おお、この人すごいな。家族や仕事のこと、悩んでること。うんうん。そうかあ・・聞きながら、わたしもいろいろと、自分のことについて話した。


わたしたちは、どちらも自分を持て余して使いこなせないところがある。なんとなくその気配には気がついていたから、ことこと煮込んだビーフシチューと、素朴な野菜のおかずを何品か作っておいた。この人は、あったかいもので出迎えたいと思ったのだ。


華奢な女の子で、ちょっと今疲れてて、でも芯は強くて、勇ましい。
なんだか放っておけない。

頑張りすぎなんだよ。
だけど、それも似合う。
だから、止めないけど、でも無理しないで。


そんなことを思いつつ、一緒に白菜の苗を植えたり、山を散歩したりして過ごした。



冬。再会。

東京で会った佐野さんは、「いや~最近ハワイ行ってきたんですよ。なにせ、出血したり、ハゲたりして、ちょっとやばいと思いまして」と言った。



わたしは、「あはは、すごいですねーとうとうハゲたの?そこまで猛進できるとこは尊敬する。だけどさすがに、たまには自分をいたわってあげてね」と笑った。



わたしは、こういう女性がとても愛おしい。
でも壊れないでほしい。
自分だって、うまく使えてはいないけど、何かできることがあればなあ、と思う。


受験勉強と、絵と。


話は変わるけど、最近、とある場所でこんな話をした。


「わたし、時々相談されるんですけど、好きなことがわからない人の気持ちがわからないんです。だって、自分は今まで一度も、好きなこと(絵を描く)が、なかったことがないから」


それを聞いていた女性が
「そうなんだ・・・!じゃあ、けいこさんは、受験のときにはどうしてたんですか?好きなこと、中断せずにどうやって、ずっと続けられてきたんですか?」とたずねた。
 

そういえばわたしには、好きなこと、すなわち「自分にとって大切なこと」を、何かのために、やめるという選択肢がなかった。


実家の母は中学のころまでは厳しくて「塾に行っても勉強をさせられるのに慣れて、自分で勉強しなくなるから、自宅で自主学習をしなさい」と言われていた。まず自分で計画をたて、勉強し、わからないところを自分で見つけて、質問ベースで週2回の家庭教師にたずねる。それはかなり効率の良い勉強の仕方だったので、成績も良かった。


逆に学校で勉強はあまりしておらず、授業中には先生の話を聞いてるフリをしながら、ずうっとデッサンしたり、イラストを描いていた。先生にとってはイヤな生徒だっただろう。受験でも本命高校に受かり、これで母も満足でしょ?と、小生意気だったわたしは思った。


母は、会社勤めをしていたので、わたしが帰宅後ひとりでどんな風に勉強しているか、時間を使っているのかまでは知らなかった。ある意味、任されていたおかげで、自分の大切なことと、勉強どちらもできたのかもしれない。



何かのために、何かを諦めない。



この話を、最近移住してきたNYのコーネル大学の研究者だった方にお話したら、「ぼくも同じで、自主勉強が主で、好きなことは好きなことでしていましたね〜」と言った。


「おお、やっぱり。何かのために大切なことをやめる、やめない。その違いってどこで生まれるんだと思いますか?」と尋ねてみたら、


「基本的に、人生に正解があると思っているか、思っていないかの違いなんじゃないですか?けいこさんは、親や教師に受験だから勉強に集中しなさい!言われても、自分にとって大切なことは減らさなかった。今でも、何かと引き換えに、人生の質を落とそうという発想がないでしょ」と言われた。



なるほどなあ。人生の質を落とそうという発想は、言われてみれば、ない。いまの田舎での生活においても、都会と行き来する仕事においても。お勉強とは違って、大人になってから直面するものはもっとリアルだ。熟考した結果、優先順位が低いことに関しては、痛みを伴いながらも手放すこともある。

決してスマートにうまくできているわけではない。けれども、転びながらも歩む日々は、それはそれで、納得感がある。


 人生の質を落とさない。



「目標は達成できたけど、幸せ感がないんだよ」と言う人たち。常に課題をクリアして、達成感はあるのだけど、そこに充足感がない。だから、いつも焦燥感にかられ続ける。 


「バランスをとる」というと、途端にいろんなことが難しくなる。「手を抜いて、こっちとあっちをまあまあで両立させていくなんて、生ぬるいことを」というイメージを持つ人もいる。


だけど・・・そうじゃなくて「何かのために人生の質を落とさない」と考えてみればどうだろう?大切なことを自覚して、大切にしていく。今も未来も、大切にする。
 


女性の体と心、暮らしと仕事。

大切なものと、自分とのあいだ。

大切な人と、自分とのあいだ。

 

そのかたちが、どんなものであるのかは、わからない。
でもきっと、そこには、一人一人のクリエイティビティが発揮される。
それを、わたしもつくりたい。佐野さんのも、いろんな人のも、みてみたい。 
 

 


お知らせ。2月7日(日)夜8時〜佐野&ヒビノのツイキャス。


今週、佐野さんたち灯台もと暮らしチーム(鳥井弘文さんも!)が、わたしの住む高知県土佐町にやってきます。お仕事が終わったあと、日曜日の夜8時〜佐野&ヒビノでツイキャスで音声配信することに。

お泊まりがてらの
なんてことない女子トーク・・・聞きたい!という稀な方がいらっしゃれば、ぜひご視聴ください(笑)



とりあえず、佐野さん、大好きですよー!


佐野さんのブログ:ともみの部屋
佐野さんがわたしについて書いてくれた記事「ヒビノケイコとの日々」

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