私が暮らす「高知県嶺北地域」のレトロな「タオカクリーニング」3代目社長、上地正人さんインタビュー第3回。5回シリーズで掲載しています。以前の記事はこちら→(第一回目第二回目)
子育てや地域活動もしながらも、常に新しい発想を持ってこの山奥で自営業を発展させておられる上地さんとの対話から、若者のリアルな田舎暮らしをお伝えできたらと思います。

■第3回目は「田舎の若者の地域活動と仕事、家庭のバランス」についてお話ししました。まずは、この漫画からどうぞ~。
しきたり1

■地域活動とのバランスどうしてる?

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ヒビノ:田舎では残業は少ないけど、そのかわりにボランティアの地域活動がいっぱいありますよね。例えば、集落の会に多数の行事、会合への出席、寺社仏閣の役、皆がやってる活動への顔出し・・・・。うちの夫も一人で沢山の地域の役をしていて、スケジュール帳はびっしり(笑)地域活動って際限がない。自営業だったら、時間の融通がきくからこそ沢山抱えちゃって、大変なところもあると思う。上地さんも、かなり積極的に地域活動をされていう印象ですが、その変のバランスはどうしてるんですか?



上地:そうですよね~。こっちに帰ってきた当初は、それこそ声がかかったもの全部受けてた時期があったんですよ。「まずは参加しよう」と思って。だけど、すべてを全力でやってたら体壊してしまいそうになって。あのときに「やりすぎたらあかんわ」と思いましたね(笑)これはどっかで線をひかないと、体は一つしかないぞ!って気がついて。



ヒビノ:すごくよく分かります(笑)地域の仕事は大事なことです。でも、今は人口が減った割りに仕事量は変わらず多くて、若い人に集中し切りがない。だけどそれによって、仕事がおろそかになったり、家庭も不仲になったり、色んなものが中途半端になっても良くない。自営業の場合は特に、仕事にかなりのエネルギー投入してお金を生み出さないと、今の時代にこの土地では暮らしていけないですしね。



上地:なので、僕の場合は優先順位をつけて「一番」のものをやる。あとのものは「余裕があれば手伝いますよ」という感じにしました。今は商工会の青年部と「まちかつ」の活動だけはメインでやってます。

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上地さんが主体的にされている「まちかつ」の地域活動。お寺での観月茶会や、商店街を舞台とした手作り市とのコラボなどをしてきた。(参考記事

■若者が田舎で暮らしにくいのは「シゴトがないから」だけじゃない。仕組みのリメイクは必須

ヒビノ:そのバランスはね、今地域で暮らしてる若者や移住者にとってはすごく難しい課題だと思います。昔からの慣習や文化もあり、それは大切にしたいと思っています。ですが、仕組みに関しては今の時代にふさわしく組み替えていかないと負担が多すぎる。若者が地域に住みにくいのって「シゴトがないから」という理由だけではないと感じます。



上地:そうですね。でもまあ、地域活動には全く関わらんわけにもいかんし、皆が助け合って支えられる面もあるからこそ難しい。だから、僕の中では「これ以上やったらしんどいな」っていうところを目安にしてます。それ以上無理すれば、疲弊して仕事にも響きます。自分にとってはやりがいもあっても、やっぱり家族に負担をかけるのは避けたい。嫁さんも「いってきいや」とは言ってくれますけど、しんどい時だってあると思うので、それには気付きたいですね。



ヒビノ:う~ん、本当にそこは大事なんですよね。実際家族に負担がかかりすぎて、別居とか離婚問題にまで発展してる話とか聞きますし。嫁だって、分かってるんですよ。地域活動は大事だし、夫も頑張ってくれいているって。でも度合いってものが・・・(笑)そこには、根本的には夫婦間だけで解決できない問題もひそんでる。



上地:ありますよね~。僕、あまりに地域活動を引き受けすぎてしんどいときは「ちょっと今休ませて」って素直に言います(笑)あと、何か新しい活動に誘われたときも、前提を話すようにしてます。「僕は、メインでこういう活動をしてます。100%はこの活動に力を入れることはできないかもしれませんけど、それでも良かったら参加させてもらいます」と。

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素晴らしい伝統文化は残したいですね。UIターン者がみこしをかつぐ率が大きくなっています↑(参考記事→
ヒビノ:なるほど~。工夫ですね。でも、そんな空気じゃないときもあるでしょ?そういうときはどうするんですか


上地:う~ん(笑)事情を説明しますね。「すまんけんど、子供が大きくなるまでは・・・」とか、仕事が忙しいこととか。お寺での観月茶会や、商店街を舞台とした手作り市とのコラボとかをしている「まちかつ」の地域活動では、メンバー同士が「いそがしかったらええで」とお互いに言えて、できる範囲の中でできることをするというスタンスです。縛りはないんで、「こんなことしたいよね」がすぐにできる。手が空いたときに、段取ってできる。それがいいバランスです。


ヒビノ:いいですね~。独身の時は自由に動けても、子供ができると動き方は変わります。今、色んな団体の活動を見ていても、若者が家族が出来ていくと共に「無理しすぎて家庭が不穏になるのはやめておこうね」という感覚が芽生え始めてきてる気がします。お互い子供もいるので「無理せずに出来ることを持ち寄ってやろう」と。それぞれの状況に合わせるのって大事ですよね。楽しく長く、続けていくためには。



上地:大事大事。

しきたり2

■「楽しくやれる範囲で、できることをやる」
家庭をとるか、地域をとるか?は卒業しよう。


上地:あと、あまりに「自分がこの活動で地域を変えるんだ!」と気負いすぎると絶対しんどくなります。周りにもついてこれる人が少なくなってしまう。だから、楽しく「やれる範囲でやろうや」と。「かまんかまん」の範囲で、それで喜んでくれる人がいるんやったらいいじゃないって。



ヒビノ:色んなスタンスが認められるようになったらいいですよね。「家庭をとるか、地域をとるか」みたいな極論じゃなくて(笑)



上地:はい。僕らは特に公務員でもないし、安定もしてないですし。自分が居心地のいい空気の中でやるのが一番だと思います。ただ、地域の自営業の場合は地域に愛されてないと、仕事もできない。愛されるには、自分も地域を愛していてこそ。ふるさとだし、廃れていくのは寂しいですしね。自分ところの成長も大事ですけど、やっぱり「できることを、できる範囲で」やっていきたいです。



ヒビノ:そうですね。地域活動って、一つでも「やる」となると、1人の人にどんどん仕事が集中しちゃって、めちゃくちゃ沢山になる。だから「引き受けちゃだめ!」っていう暗黙の了解になってしまい「やらないとなると、一切やらない」。0か100かになりやすい。だから、これからは「できることを、できる範囲で」くらいのスタンスがいいと思います。



上地:僕も奥さんに「地域活動は大事やし、やってもいいけど、理解できる範囲でおってほしい」って言われたことがあって(笑)さすがに、それをこえられるとしんどいですよね。僕も独身じゃないし責任もあるわけで、やっぱり家族は大事にせないかん。



ヒビノ:龍馬みたいに「すべてを捨ててもこの世を変えてやる!」っていうスタンス、引っ張っていくリーダーとかには必要かもしれないし、すごいとは思うんですけど、自分の家庭でいうと・・・ちょっとしんどくてついてけない(笑)もうちょっとバランスとって、家庭も仕事も地域も幸せでいられる方法を見つけたいなって思います。上地さんって、31歳で若いのにそのへんすごくしっかりしてらっしゃいますよね。


上地:とんでもございません。まだまだ全然です(笑)

___(第3回目終わり。続く)___________

ということで、第3回目はココで終わり。田舎の自営業と地域活動のバランス、感じていただけたでしょうか?この問題は「嫁が耐えられないからダメ」「心が狭い」とか、家庭内のことに矮小化しちゃわれがち。だから余計に言いにくくなって我慢大会に。我慢のすえに「もうしんどい!全部やめた」って人も出てくる。そしてますます、引き受けてくれる人に沢山の仕事が集中する。0か100か極端な選択になっちゃう。そうやって、どんどん田舎暮らしのハードルが高くなる。田舎が好きで住み続けたいからこそ、大きな仕組みのリメイクが必要だと思います。


第4回目のテーマは「移住者と地元者・町村ごとの境目を持たなければ、広くつながれる」です。後日UPしていきますのでお楽しみに~!


第1回目
第二回

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■著作エッセイ漫画
山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ 山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ [コミック]







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自然派菓子工房「ぽっちり堂」
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