■さすが、おばあちゃん。


実家のおばあちゃん(99歳)が逝った。
二歳まで一緒に暮らし、その後も仕事が忙しかった両親に変わって私を可愛がり、熱の日には看病もしてくれた。幼少期、死について考えるとき、いつも「おばあちゃんが死んだらどうしよう」って思ってた。それほど、大好きな存在だった。

001

この間実家に帰った時に、おばあちゃんには会えていて、体調が悪いのに遺言のようなものまで伝えてくれていたので、ある意味で悔いはなかった。
亡くなったと聞いたときは、たまたま関西に出張中で、割と冷静に仕事を終わらせた。ホテルで1人になって、気を紛らわせたかったのか限界までスマホを眺めていたけれど、辞めたとたんにぽろぽろ涙がこぼれてきた。


そのとき、不思議だけど、金色のつぶつぶみたいなものがやってきて、キラキラと舞い、体と一体化するような感覚がした。寂しいのに、温かい。おばあちゃん、最後に来てくれたんかなあ。悲しいのに、感じるのは愛情ばかりだった。



実家に帰っておばあちゃんの死に顔を見たら、あまりにも美しい顔で横たわっていて「さすが、おばあちゃん」とつぶやいてしまった。

■「どうせ生きていくんやから、苦しくやるより楽しくやるほうが得やで」


image

おばあちゃんの口癖は、「どうせ生きていくんやから、なんでも苦しくやるより楽しくやるほうが得やで」だった。これは、小さな頃から結婚式の時まで常に言われてきた言葉で「起こったことを受け止めて、前へ進む」という私の基盤になっている。


おばあちゃんは、伊勢の生まれ。幼少期母親に早く死なれ、養女に出された先で今で言う児童虐待的なこと、児童労働もさせられて育った。だけど、そのことを悲壮ではなく物語のように、ニコニコと「こんな仕事でなあ~こんなことがあってなあ」と語ってくれた。


おじいちゃんと2人で大阪に出て、ゼロから築いた家庭で7人の子供を育て、子、孫、ひ孫と繁栄し、今親戚はものすごい人数に膨れ上がっている。
ものすごく苦労したのに、いつもびっくりするほど明るくて楽天的、光がぱーっと出てるような存在で私達を照らしてくれていた。ちょっとワガママなときもあるけど可愛らしくて愛される、魅力のあるキャラだった。学歴も何もないけれど、どんな人にも「ありがとう~」と卑屈さより感謝を表すところがさっぱりしていた。

■おばあちゃんのコロッケとドーナツ


003

おばあちゃんは、料理が好きで、ほんとうに上手だった。しわくちゃの手で、わしゃわしゃっと作るのに、何でもおいしい。私が中学生の時、絶妙な固さで甘辛い「煮豆」があまりにおいしかったため、「レシピを教えて」と習いに行ったら「全部、加減や~」って言われた。姿で覚えるのが正しいのだと思って目で追ったことを覚えている。



見た目はごつごつのまあるいドーナツ、お弁当箱いっぱいの大きさがあるコロッケ。
部屋には大きな味噌つぼがあって、いつもふわわ~んと発酵するにおいがした。



お葬式の日、おばあちゃんのお棺には、みんなが思い思いにおばあちゃんが好きだった料理も一緒に入れていたのが印象的だった。うちのお母さんは、おばあちゃんが好きだった「きぬさや」と、「アーモンドいりこ」と、毎日欠かさず食べていた「梅干」。叔父さんは、高校生の時よく食べさせてもらった「ドーナツ」をわざわざ作って添えてくれた。



死ぬ前の日まで、自宅でごはんを自分の口で「おいしい、おいしい」と食べられた。好きだった番組「志村動物園」も見て「犬がかわいいなあ」なんてしゃべって、夜眠ったまま亡くなった。

image

「このお茶はおいしいなあ。ほんまにきれいな緑色してるわ」日常の一瞬一瞬を、味わい、喜ぶのが本当に上手な人。今はついでに涙がこぼれてしまうけれど、これからも私は台所でおばあちゃんを思い出すに違いない。

■一瞬を味わう生き方と、愛。


002

大好きだった物たちや、お料理、そして一つ一つ親戚みんなで置いた沢山のお花で埋め尽くされて、おばあちゃんのお棺は閉まった。みんなそれぞれ、泣いたり、お別れを言ったり、お礼を述べたりしていたけれど、こんなに愛されて見送られるということは、おばあちゃんの愛がそれだけ人に注がれていたからだ。ものすごいことではなく、家庭や子、孫に愛を注ぎ続ける、というシンプルな生き様の結果は「圧巻」だなあと思った。


私達は、どんなに大切な人とも、愛している人とも別れなければならない。
生まれ、たまたま縁があって出会い、触れ合い、愛し合って、消えていく。
だけど、それは悲しさだけではなく、温もりもくれる。
物質的にはなくなるけれど、なぜか心の距離は近くなる。



お葬式は亡くなった人のためのものでもあるけれど「のこされて、これから生きてゆく人のためのものでもある」と聞いたことがある。おばあちゃんの生き方から受け継いでいくとしたら、何だろう?


私は、その日常の一瞬一瞬を味わう心を。そして愛と、おいしいごはんを。

おばあちゃんみたいに沢山の子供は産めないけれど、私は表現を通してこの世に愛を産んで生きたい。
004

さて、私は今日も、おいしいごはんを作ろう。
一日がはじまる。

◾️メルマガをはじめます「ぽっちりライフを描こう」 限定動画、記事、講座の案内がほしいかたはこちらにご登録を

◾️ヒビノケイコのプロフィール・執筆&講演履歴と依頼はこちら



■ヒビノケイコ4コマ新聞のFacebookページやツイッターでは、ブログ記事で書いていない情報も発信中!
はじめての方で「いいね!」と思っていただけましたら、一押しお願いします。

このエントリーをはてなブックマークに追加





◾️2刷目再発売、よく売れてます。都会から山奥へ、30代移住9年目。田舎暮らし、起業、子育て、地域のお付き合い。楽しさも悩みも、すべてつめこんだエッセイ漫画。






◾️「ヒビノケイコが最近読んだ本10冊」
◾️「ヒビノケイコが愛用するキッチン道具Best10」日本の老舗の逸品~最近のヒットまで


◾️自然派菓子工房オーナーとしてオススメする「質の良いお菓子材料・サイトまとめ」



◾️私がオーナーをしている自然派菓子工房「ぽっちり堂」山の素材で手作りした優しいお菓子ギフト・内祝いを全国通販してます。