■風景の奥を読み取る

春、レンゲ畑を見ると「誰かがここにレンゲの種をまいてくれたんだなあ」「畑のわきを通った人が嬉しい気持ちになればいいなって思ったのかな?」なんて想像して楽しくなります。
田舎に移住して8年。都会にいたときは自然=自然そのものだと思っていたのですが、棚田にしろ、畑にしろ、誰かが手を入れてなければすぐにボーボーになり景観は崩れます。
美しい「里山」というのは「自然+人の気持ちや手入れ」で出来ている風景。
町も同じで、町の姿をしているからではなく、人の想いが入ったコミュニティが形成されてはじめて「生きている町」になるのだと思います。
■「あそこはいい家」の意味

そんな田舎で暮らしていると「損得を超えて、100年先のために何かをする」ような人をみかけることがあります。そんな時、何か光を帯びているように見えるんです。なんなんだろう?って立ち止まってしまう。
都会でいるときは「あの家はいい家」=「財産持ちだから」という意味なのかな?って思っていたんですが、田舎に来てから「いい家」=「徳がある家」という意味があるんだ!ということに気が付きました。徳があるため尊敬されている、代々敬われているんですね。
■徳を感じる人々。限界集落の茶畑を手入れするおじいさん。
私達が通っている限界集落の茶畑のおじいさんもそうで、何のために?と思うくらい土地を美しく清め、手入れし、その土地は光をはなっていました。(参考記事限界集落の茶畑で感じた「今までを作った人に敬意を払いながら、新しい時代を開拓すること」)
その姿に、生き様に学ぶものはとても大きかったです。

■うちのおじいちゃん
うちの夫のおじいちゃんはもう100歳近く、普段はほとんどうつらうつらと過ごしてます。だけど大事な話になるとスイッチが入ってクリアになり、助言をくれます。夫は移住支援NPOの事務局長をしており、最近は地域創生で各地から視察が来られることが多くなり、ある時国の重役の方が黒塗りの立派な車で来られました。移住支援はどこの自治体も今力を入れていますが、夫ふくめ民間NPOや実地で働いている人達は立場も不安定で薄給で、なんかすごいコントラストだなあと思いました。おじいちゃんは、こんなことばをくれました。

こういう意識で人のためにやってきたおじいちゃんは、地域の人達に信頼があり、それが私達の代まで恩恵をもたらしてくれていて、だからこそ地元の人とのやり取りが必要な移住支援活動もうまくいくところがあります。今でも存在感がハンパなく、いてくれるだけで場が整うような方です。
■KATALOGを作る祁答院さん
自分らしく働き、暮らしてい

祁答院さんは「社会にとって必要なことをして→それが喜ばれて価値になり→そこからお金や報酬の流れも発生する」という「お金がもらえる→だからやる」という現代の形の反対を模索しているとのことでした。会社を経営するにはもちろん損得勘定、お金の流れは大事ですが、こういう「素晴らしさ」を作っていくという方向性もありで、実験されているのが四国的だなあと思いました。
■絶滅危惧種の「徳」は道徳や損得を超えたもの
こんな風に、「徳」というものが根っこにある。
都会で生まれ育った私は、「徳」という概念はもう絶滅したものかと思っていました。
だからこそ、まだうっすらと生きている田舎の「徳」は希少であり、地域作りにしろ、仕事にしろ、何の活動であってもこれからの時代にとって重要なヒントがあるように感じるんです。
この「徳」というのは、道徳とは違う質のもので、損得を超えたもの。(私はどちらかというと、正しい間違ってるとか、道徳とかは苦手です)
「一気に木を刈ってしまってはいけないよ。来年も育つように、ちゃんと残しておくんだよ」というように、徳は自然の原理に添った知恵だと思います。

例えば昔だったら「100年先の子供のために木を植えよう」となったのが今は「100年先の子供のために様々な活動をする」ということにもなっている。活動や仕事の一つ一つが、やがて実って豊かさを分かち合える種になり、コミュニティの基盤になるのだと思います。
■目先も大事だけど、目先に踊らされないからこその「素晴らしさ」

それはよくあるCSR活動ではなく、「唯一無二」に立ち上がった光る存在になります。
「良しあし」「優劣」で競争すれば、仕事でもロボットや効率、大企業には勝てません。
地域だって、それだけでは生き残っていけません。
(参考記事そろそろ「地域課題を解決する」という思い込みから抜け出そう。妄想から始まる「世界観の表現」へ)
たった一つの「素晴らしさ」を作り上げること、体現していくこと。
そこに人が集まってくる。流れが起こる。
色んなやり方や方向性がありますが、基盤に「徳」という方向性をおくことで、集まってくる人の質を高め、コミュニティが良い方向性へと向かうための一つの大事なキーワードになるような気がします。
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■著作エッセイ漫画 山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ [コミック]
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