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空き家発掘担当の仕事


地方の人口減少、高齢者が亡くなった後、誰も住まない家の増加。
田舎ではその辺りを見回せば何件もの空き屋が見つかります。

全国の空き家数は2013年で820万戸。
「放置された空き家」は318万戸で、5年前より50万戸(18・7%)増

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↑放置され、ツタが屋根を覆っている廃屋


夫がつとめるNPOれいほく田舎暮らしネットワークでも空き家担当がいるんです。仕事は空き家発掘、調査し、家主さんに貸してくれないか交渉すること。


もともと不動産屋がない場合も多く、「貸す」という概念があまりない田舎で、この対策をすることは難しいこと。
現状では、移住希望者は増えていても、借りられる空き家が少ないため物件不足。


「空き家を貸して欲しい」と申し出たときに断られる理由。
以前の記事にもかきましたが、その中でも多いのがこれ。

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■盆暮れって、ホントに使ってるの?




「盆暮れに使うから」という理由です。
では実際に使っているのか?を観察してみると1割未満ではないでしょうか。
(空き家担当の方が数百件交渉した上での感覚的な数字ですが)


ちょっと想像してみても、
わざわざ空き家になって状態があまりよくない家に食器や道具を運び込み、掃除をしてみんなで過ごすかというと・・・(´・ω・`)
いつも暮らしていて、掃除もゆきとどき、道具も整っている自分の家があれば、そこでお盆もお正月もする方が自然かと。


よっぽど重要な何回忌とかの時に、使うこともありやなしや・・・?
というレベルなのでは。



では、「盆暮れに使う」その言葉の奥にはどんな想いがあるのか?
よりよくなるための対策はあるのか?今日は一緒に考えていきたいと思います。



■空き家の管理は大変
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「盆暮れに使う」とおっしゃる方の空き家は、放置されて朽ち果てた空き家とは違い、管理されてたたずまいも美しいことが多いのです。


最低年に4回は家の管理に。
家の周りの草をひいて、家に空気を通して、お墓が近くにある場合が多いので掃除をして・・・
畑も近くにある場合は、育てるまでいかなくても草刈などはする必要があります。

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1、ご先祖様に申し訳ない。

代々続いてきた家を自分の代で手放したくない。そんなことをしたらご先祖様に申し訳ない。
「誰かに売るくらいなら、朽ちたほうがまし」という方までいらっしゃいます。


2、親戚の想いを背負っている

地元に残った長男(それ以外であることもある)は、親戚の思いを背負っているところがあります。
皆にとって思い出のある家だから、いつでも来れるように。
心のよりどころでもあります。

その場所を長男として守っていかなければ!=家を手放してはいけない。という判断に。
田舎の長男には、色々見えないところで背負っているものが今でもあるんです。


3、正直、現実と向き合うのがしんどい


壊すにしろ、貸すにしろ、売るにしろ、
空き家問題には、お金、親や子供、親戚とのやりとり、労力がかかります。


自分の代では終わらせたくない、答えを出したくない、めんどくさい。
=ツケは何となく次の代にまわすという結果になりがち。



■そんな家にかぎって光っている。
誰もが住みたいと思う空き家だったりする。


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ただ、そういう家ほど、責任感も愛情もある方が管理されているため、
ぱっと見たときに誰も住んでいないのに、住んでいるかのような光がある家だったりします。



そして、みんなが憧れる古民家的な風情のある家が多いのも特徴。
そこには、長年の人々のストーリーや愛されてきた歴史がつまっているのです。




できれば本当に、子や孫が帰ってきてくれてすんでくれれば一番いいですよね。ですが、残念ながら現実にはかなわないことが多い。


空き家問題はせつないし、話しにくい話題です。
だからこそ親子でちゃんと話し合い、
対策をたてることが次の代への負担を少なくします。


■大切な家だからこそ、家族以外の活用法もある
「価値観を尊重したまま行動を変える」という選択



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もし、家族で話し合った結果、
誰も空き家を活用する人がいない場合はどうするか?


■すぐに壊す。
■朽ちるまで待つ。
■管理し続けるけど具体的展望はなし
それ以外に、もう一つ案があります。


「いきなり都会からやってきた知らない人にそんな大切な家を貸すか?」
というと、ハードルが高すぎる。



じゃあ「昔ながらの価値観を変えてもらって、どうにか貸してください」
って頼み込むのも違う気がします。



ではどうするか?
「家主さんの価値観を尊重したまま、ハードルを下げて行動を変えてもらう」というやり方です。

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では、ハードルを低くするためにはどうしたらいいのでしょう。


例えば、これは今全国で模索中の案なのですが、

■個人ではなくNPOや町、団体に貸す。
借りうけた団体が責任を持って管理し、個人に貸す。

■長期的に貸すのではなく、短期おためし住宅などとして貸す。

■使いたいとき(盆暮れなど)には家主が使える

■定期借家契約にしておけば、指定した期間の賃貸契約になるので「借り主が居つく」などのトラブルが起こりにくい


このようにしておけば、
信用のおける団体に手間のかかる管理をやってもらい、
信用のおける人に短期で貸すということができます。



また、本当に使いたい時には自分の労力を多大に使わなくてもきれいな状態で使うことができる。
その代わりその団体のメリット(例えば管理費の代わりに家賃は少なめ、ただなど)も盛り込んで契約をするなど工夫が必要。


これなら「今まで人に家を貸すことに抵抗があった」方でも、貸せるかもしれません。


■ハードルを下げてまずは実践→変化を体感する→価値観の変化→次のステップへ

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実際に貸してみると、
誰かがその家にいることで家がますます光り出したり、
笑い声が聞こえてきたり、何らかの変化を実感できます。


そんな変化を体感すると、価値観も少しずつ変化します。


貸してみていい変化があれば、次のステップへ・・・・
信頼できる入居者「この人なら」と思える方がいたときに、
長期間貸すという選択がありうるかもしれないですよね。


空き家の持ち主にとっても、家にとっても、借りる方にとっても、
何もしないよりはいい答えが導き出せるのではないのでしょうか?


■光のある空き家には歴史と文化がつまっている。
子や孫か、それとも都会の移住者か。
どんな答えでも、とにかく話し合うことが大事。



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この問題を考えているとき、実は私達の実体験を思い出していました。
私たちは8年前京都から夫のふるさとにUターン。本当は定年後に、と思っていたのですが子育て環境を考えて早めに移住しました。


そのとき、今住んでいる築100年の古民家は20年間空き家状態。
家族にとっては「誰も住まないから、壊れた場所があってもお金を入れてわざわざ直せない」「でも大事な思い出のつまった家、おばあちゃんたちにとっても大事な家」だからどうにか管理してきたのです。


私たちが暮らすことになり、
雨漏りしていた屋根を直し、家を改築して・・・と多大なエネルギーがかかりました。
ですが、今ではその家があってくれたおかげで、子供と3人幸せに大好きな山の中で暮らすことが出来ています。家族もすごく幸せなことだと言ってくれ、近所の方も「もう一度、あの家に明かりがともった。そんなうれしいことはない」と。



そんな風に、空き家になっていた家がまた命を吹き返すことがあります。
これは、血縁のある人でも、そうでない人でも同じこと。
少子化の時代だからこそ、自分の子供はそんな考えを持たなくても、
他人の子供がそう願うなら場所を引き継いでいってもいいのではないでしょうか?




大切にしてきた家は、大切にされてゆく。
そこには愛があるから。
そう思います。

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その家に対する思い出も、歴史も、ひとつずつ違う。
壊すにせよ、貸すにせよ、売るにせよ、うやむやにせず。
真剣に誠実に家族が話し合って決めた結論は、それだけで素晴らしいこと。
その一つの選択肢に、今日の案をとり入れてみてくれたら嬉しいです。


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■幸せになるための移住を応援しています⇒NPOれいほく田舎暮らしネットワーク
移住希望の方への窓口と移住者同士、地元をつなぐネットワーク作りをしているNPO。夫が事務局長をしていますのでお気軽に。

■私、ヒビノケイコについて。
高知県の山奥で暮らしながら作家活動をしています。
こちらは新刊のエッセイ漫画。移住のこと、田舎暮らしのこと描いてます♪

山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ [コミック]








全国での講演(移住支援、地域活性化、キャリア授業)や田舎へのスタディツアーも行っています。☆執筆、講演などお仕事依頼はこちらまで→info@pocchiri.com

自然派菓子工房ぽっちり堂ネットショップ
http://www.pocchiri.com/
田舎に仕事を作るために作った、地元素材のお菓子工房。
焼きたてのやさしいお菓子ギフト。お歳暮にどうぞ♪

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