ホテル火災




京都での講座1日目が終わった夜、10じごろ。ローカルな京都タワーの見えるホテルで、お風呂上がりにガウンを羽織ってベッドでまったりしていた。

・・・と、その時突然、「ウイーンウイーン!」とものすごい音で、火災警報が鳴ったのだ。

「火事です、火事です。7階から出火しました。避難してください」とアナウンスが流れる。 「うわー、こんなことってほんとにあるんだ。7階って同じフロアだよ・・・」と思いつつ、焦って着替える。


「ごろごろするときも、ある程度ちゃんとしたかっこしてないと、こういう時に困るんだなあ。明日の講座の資料、大丈夫かな・・・」そんなことをうっすらと思いながら、同じ階の人達と一階に避難。


一階には、ガヤガヤごちゃごちゃと、多国籍な人たちが集まっていた。


外からカンカンカン・・・ウイーンウイーンと音がしたと思ったら、すぐに消防署の人がホテルに入ってきて、火災現場に走る。 その間、ロビーのソファで、騒動が収まるまで、ちょこんと座って待つことにした。



非常事態、人間のコントラスト



ソファの手前には上品なおばあちゃま。わたしのとなりには、30代くらいの男性と、その息子である5歳くらいの男の子が座って、おしゃべりしていた。 おばあちゃまはあわてて部屋から飛び出してきたのか、パジャマのまま。びっくりしたと言いながらも、穏やかな顔をしている。

おばあちゃまが「火事はほんとうにおきたのかしらねえ」と話しかけると、男性は「いま点検してくれているんで、待ってましょうね。なかったらいいですけどねえ」と、世間話をしている。

男の子は火事の警報に驚いたままたたずんでいた。お父さんが「いま、消防士さんが点検してくれてるから。消防士さんってかっこいいね。こういう時に頼りになるんだね」と話しかける。 男の子は「うん、びっくりしたけどかっこいいね」と言いながらくりくりした目を泳がせている。

そんなことをしているうちに、消防士さんたちが帰ってきて「火災は発見されませんでした。機械の誤作動が原因です」と言ってまわった。

ああよかった。ほっとしていると、となりのお父さんは「よかったね。じゃあ、みんながお部屋に帰るまで、少し待ってから行こうか」と男の子に微笑む。

・・・と、そのときホテルのフロントの方でドスのきいた太い声が聞こえてきた。

「もっとはやく説明できたんじゃないかよ!遅いんだよ!」 「誤作動ってどういうことだよ!」 怒った男性たちが数人、ホテルマンに詰め寄る。 雰囲気が他の人にも伝染して、わらわら人が集まり、「そうだそうだ!」「もっと謝れ!」という渦ができていく。

人間の集団心理って、こうやって伝染するから怖いものだ。さっきまでなんともなかったのに、突然、みんなで、ホテルの人に詰め寄っている。なんとなく流れに乗って、参加する人が増える。


当然、ホテルにもミスがあるのだから謝るのは大事なことだけど、そんな風にまで詰め寄らなくてもいいんじゃないかなあ・・・と思いつつ、眺めていた。


そんな光景を見て、となりにいた男の子は「せっかくのりょこうが、だいなしだねえ」とつぶやいた。 お父さんは、「だいなしじゃないよ。びっくりしたけど、こういう機会もめずらしいから、練習できてよかった。結局火事ではなかったのが、ラッキーだったしね。さあ、はやくねて、明日また、旅を楽しもうね」と、にっこり語りかけて階段を上っていった。


その後ろ姿を見ながら「ああ、なんだかいい夜のひとときを見せてもらったかもしれない・・・」と思った。


非常事態になったときの、人々の行動にはコントラストがある。
こういうときに出る態度が、その人の器を表している。


そして、非常事態にも穏やかで冷静に、自分の言葉をかけているお父さんは、不安な気持ちや集団に飲み込まれず、温かいものを生み出してる人だなあと思った。


そこになかった温かいものを生み出す人






騒動の翌日、2日目の講座の帰り道。スタッフの小野さんと京都駅を歩いていると、小野さんは、さっと道端にポイ捨てされたペットボトルを拾って、ゴミ箱に捨てていた。


エレベーターに乗るとき、ベビーカーを押すママたちや、おばあちゃまたちが、安心して入れるようにと、開くボタンを押して開けてあげたり、エスコートしてあげている。


目立たない感じでやっているのだけど、気がついた人たちは、「ありがとうございます」と嬉しそうににっこり笑って、それぞれのゆく道に歩いて行った。

そこになかった「ありがとう」を作れる人って、すごいなあと思った。


日常の中のクリエイター




 不安と怒りがうず巻く渦中で、あたたかなものを生み出す人。
そこになかった、ありがとうを生み出す人。

居合わせたわたしたちは、その人を全く知らなくても、少しだけ幸せになれる。
ささやかだけど、そこには生き方と、「態度」という「表現」が出ている。


日常の中の、クリエイターになれるかどうか。
そういう目線で、毎日ひとつでも、なにかしてみよう。



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