「鬼も〜内!福も〜内!」


京都、しんしんと底冷えする2月3日、節分。大本教の節分祭は盛大だ。


一般的には「鬼は外、福は内」だけど大本教の場合、「鬼も内、福も内」という掛け声をつける。詳しい意味は聞かなかったのでわからないんだけれど、わたしには、ものすごくリアリティがあるように感じた。


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高知に移住するまで、京都府亀岡市に住んでいたわたしたちは、よく亀岡城跡地にある大本本部のお祭りに遊びに行った。特にね、大本教徒ではないんだけど、亀岡の友達には代々信仰されている方もいて、気楽に「おいでよ〜」と誘ってくれたんだ。


北大路魯山人も賞賛した、大本教祖の出口王仁三朗氏(1871〜1948)は「芸術は宗教の母なり」という独自の芸術論を主張していた。彼の残した陶芸作品・短歌・書画は、マジですごい。その奔放で自由な存在感に圧倒される。小山冨士夫氏や松本清張氏など大本の芸術には触発された方が多いけれど、現在でも有名な芸術家たちが出入りしていると聞いた。


戦前・戦後と国から弾圧を受けてきた教団だからか、勧誘とか全然なく、他の宗教とも親交があるような、ゆるい雰囲気が好きだった。一般の人でもオープンに季節のお茶会や能舞台などに参加させてもらえ、日本の伝統文化をふだんから体感できる機会が得れるのは、ありがたいなあと感じた。そこで触れさせてもらう陶器も、掛軸も、お花も、感性も、すべてが一級だった。

 

◾️鬼にもやさしく


 

人の心の中には鬼も福も同時に潜んでいる。鬼だけ追い出してやろう・・・というのは以前からどうも、なんだか、かわいそうな気がしていた。だから「鬼も内、福も内」という掛け声は、しっくりきた。
 

人間の中にある怒りや嫉妬、恨み、憎しみ、負の感情。そういうものとどう対応していくか?というのは大きなポイント。


自然と湧いてくるそれらの感情を「こんな風に思っちゃダメ、どっかいけ!」と追い出すと、ますます抑圧されて増大し、自分を苦しめることにもなる。かといって、「見ないでおこう」と蓋をしたり、「消そう」と避けたりしても、ますます怖くなって、おびえることになる。


だから、それらの鬼の部分が心に現れても、そのまま受け止めてあげる。あるよねって。でもそれは、=自分!と自己同一化する必要もない。一瞬一瞬、流れている現象だから。認めて、流していけばいいんだ。その上で、「今」に意識をおく。やってくる感情や感覚は、変化していくものだから、いつか自然に消滅する。
 

 避けたり、攻撃すると、今までの癖のパターンが強化されるけれど、こういうふうに「鬼も内」と受け止めてあげられると、パターンが崩されて、新しいパターンが形成されてゆくんじゃないか・・・。


「そんな話を、昨日加筆修正していた仏教対談の原稿でも、していたなあ」なんて思い出しながら、今これを書いている。


そうそう。やさしく対応してあげれたらいいんだけどね。わたしたちはいつも、惑ってしまう。相手の鬼を見たり、自分の鬼を見たときに、やっぱり怖いから。


ほんとうは、それがその人の本質でもないし、自分の本質でもないのにね。「本当の自分」なんていなくて、多面的な要素が、そこにあるだけなんだよ。 


でも、ちょっとずつ、いい方向にいきたい。
だから、いろんな自分の要素を、そっと受け止めてあげれる器を、ひろげよう。


◾️鬼前提で見れば、決断できることもある。


 
もうひとつ。人の中に潜む、鬼といえば・・・。


人は、「どういう集団に自分が帰属しているか」で価値判断を決めるところがある。そして、敵・味方という構造を作ったり、よそものを排他して生き残ろうとしていく。現代においてもずっと続く構造。サラリーマンとフリーランス、都会者と田舎者、宗教の違い、いろいろなものにおいて。


「どうして、敵・味方なんて構図をとろうとするの?派閥とかも意味わかんねー」わたしは、ずっとそう思ってきた。けれど、それはもう、人類の生存本能でやっちゃうことなのだろう。ある意味で、鬼の部分だよね。価値観の違いを、いつまでたってもフラットには見れない。



誰かが、心から思ってることや主張を出せば、勝手に「敵認定」する人が現れる。だけど、反対に言えば、それだけ仲間も寄ってくる、ということだ。誰にも届かない、あやふやなメッセージを出すくらいだったら、はっきり主張を出したほうが、真の応援者も増えるってこと。


もう、鬼の部分を「あるよね」って前提として受け入れちゃう。いちいちそれで悲しまない。それによって、逆に、あきらめがついて前向きに決断できることも増えるんじゃないか。


そんなふうに思う、今日この頃。

 
さて今日は、恵方巻きをたべよう。亡くなったおばあちゃんは、はみ出すくらいたくさんの具を巻いた恵方巻きを、手作りしてくれていた。わたしも出来るだけ作っていたんだけど・・・ごめん。今年は、原稿の締め切りが重なっていて、できなさそう。


おばあちゃんの、あの甘すぎない酸っぱいお寿司が、食べたいよ。



追伸1)

こんなふうに鬼と、楽しく踊れればいいよね。小さい頃好きだった、懐かしの曲。



追伸2)絵本の世界にも、いろんな鬼像があるね。




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