父の故郷は瀬戸内の島で、子どもの頃は毎年夏に遊びに行った。
家からすぐ目の前が海。
日中は暑くて泳ぎに行き、ひたすら海で浮かんでいたので、いつも真っ黒に日焼けする。
叔父さんの船に乗って、糸を垂らしただけの釣りをしたり、無人島へ行って遊んだり。


お盆を過ぎればくらげが出て、刺されるので泳げなくなる。 だけど海の中にただようくらげも好きで、ゆらゆら眺める。 さささーっとテトラポットを駆け巡る海虫もめずらしくて、目でおいかけた。


父は、その頃忙しいサラリーマンだったのだけど、実家に帰ると気が抜けるのか、熱を出して寝込んでいることもあった。 無口なおばあちゃんが作る無骨なおはぎを、沢山ほおばっていたのを覚えている。


夕方になると従兄弟が海に潜って取ってきてくれた貝や、その日の漁でとれた魚を焼いて食べる。 海辺でバーベキュー。どれも野性的な味がして、じゅわっと口の中にはじけた。


やがて、花火のにおいが消えて、静かになる。
夏の最後を感じる夜。


 
おやすみなさい。