先日、息子の誕生日だった。ここまで大きくなってくれて本当に嬉しいのと、周りの人達が育ててくれていることに感謝。そして、昔描いた漫画を見つけた。
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■イメージと体がばらばらだった妊娠


私の中では妊娠出産はそんなに難しいことではないイメージだった。というか、「妊娠も出産も病気じゃないし」と思ってた。(当然そうなんだけど)自然食を毎日食べていたし、畑に行って動いてるつもり、比較的元気。だから自分は妊娠しても体調が絶好調でマタニティヨガなどをしてハッピーな妊婦になれるはず、と信じていた。


だけど、実際はイメージと全然違った。妊娠初期から、不正出血があって流産の危険におろおろしたり、おなかが張って早産の危険から絶対安静になり寝たきりの日々を過ごしたり。びっくりするほど思ったようにいかなかった。冷えの改善方法を習ってやってみたり、本や助産婦さんに教えてもらったことも色々としてみたが、あまり効果が感じられない。


妊娠中、よく助産婦さんに「無理しないで」と言われた。だけど「無理」のレベルも頭で考えてるラインと、体の反応が違う。自分では通常の家事をしていて全然無理してないつもりなのに、おなかが張る。一体、何を尺度にしたらいいんだろう・・・?・・・ていうか、そもそも妊娠前までに体を整えとけってこと?

「でももう遅いし→自分を責める→罪悪感→子供にすまない思い→ストレス→ますます冷える、おなかが張る→赤ちゃん降りてくる」という悪循環にも陥った。体が動いても、何かに集中して知的な作業をしても、おなかは張ってしまう。もう放心したように寝ることしか私には残ってないのか・・・。自分が思ったこと、努力が及ばない境地に遭遇した私は、ガーン!となった。
2015-03-24-11-46-53

■思うようにならないことの苦しみ。人の気持ちは想像できないからこそ、当事者になったときの体験を生かす


自分が考えたことが何一つ出来ない、したとしても効果が出ない、実感さえあてにできない、自由に動けない・・・となったとき、想像以上に苦しみがやってくることが分かった。そんな経験をして一つだけ良かったのは、もし私が何もかもスムーズで順調に妊娠・出産できていたら「自分が傲慢になっていたかもしれない」というところだ。

ものすごいつわりで、船に全力で揺られてるほどしんどい時に「あんたは、怠け者やからつわりになるんや。優雅やな~」と言われたり(その方はつわりはなかった)「なんでそんなに?私の時はこうで・・・」と自分のうまくいった妊娠期のことを話されたことがあった。そんな時、うまくいかない自分と比較して辛くなった。

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「相手の気持ちを想像してごらん」なんてことはよく言われるけど、現実にはなってみないと分からないことはある。受験でもそうだけど、落ちた人にしかわからない気持ちがある。妊娠においても、うまくいかなくて辛い気持ちは、やっぱり経験しないと理解できなかったと思う。これは、後に流産したときも死ぬほど辛かったけど、同じような経験をした人の気持ちが少し分かるようになった。


人間は全てを体験することはできず、人の気持ちを100%汲むこともできない。お互いに、誰かを傷つけて生きているものだ。全ての人の気持ちを汲み取ってフォローすることはできない。だからこそ、ある事柄の当事者になった時にはそれを生かし、気持ちや学び、良いと思ったことを発信していくと多様な人の役に立つと思っている。


「こういう方法で、食事で体はよくなります」「妊娠出産がこうやってうまく出来ました」という人の情報は、知恵をくれる。同時に「うまく出来ませんでした、こんな苦労しました」という人の情報は「私も、そうなんだよね」と同じ立場の人の共感を産み、救われる。良いことも悪いことも、智恵も苦しみも、結局は糧になり、人を救うものになる。
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■自分を責める親と落ちこぼれ妊婦


私はそんな妊娠期を経験しているうちに、だんだんと自分を責める気持ちが大きくなってしまった。「なんでこんな体になっちゃったんだろう?」「なんでもっと、色々気をつけてこなかったんだろう」今思うと、そこまで責めるようなことじゃなかったなあって思う。


そりゃ、もともとの自分の体質を分かって、ごはんに気をつけて、運動もして筋肉と体力つけて、子宮温めて、デトックスと色々した上で妊娠できたら最高かもしれない。だけど、そんなにバッチリなタイミングで、さずかるということは稀だ。次の機会に少しでも改善することくらい。


妊娠期には「これがいい」という情報がいっぱい入ってくるけれど、だからと言ってそれが自分の状態にあてはまるか?といえばそうではない。情報に揺さぶられ、不安感だけが強くなってしまう場合もある。「妊娠の正しい姿」と比較して「自分は落ちこぼれ妊婦」と思い込むのはもったいない。


子育てがはじまってからも、想定外の出来事は続く。その時に「こうあるべき」「ちゃんとしないと」「こうでないと」が強ければ強いほど、苦しい子育てになってしまう。真面目すぎる人は「想定外のことはあるんだな~」くらいに思って、もう起こってしまったことで自分を責めず「ちゃんとする」ことよりも「お母さんが笑っていられる」状態を大事にしたほうがいい。(参考記事

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■どんな風に産みたい?産み方を選択する。助産院での出産


「どんな風に産みたい?どこで産みたい?」日本のスタンダードは病院。そのほかにも自宅出産や助産院という選択肢がある。私の場合は、安心できる家のような場所で自然に産みたいと思って、京都の老舗助産院を選んだ。そこでは、冷え改善や妊娠期の体調をよくするための方法を習ったり、マッサージしてくれたり。私は参加できなかったけど、マタニティヨガとか、勉強会、産後のサークルなど、色々な活動の拠点にもなっている温かい場所だった。予約すれば待つことなくすぐに見てもらえ、1時間近くは助産婦さんとゆったりと話せ、相談もでき、リラックスできる時間はすごく幸せだった。

ただ、助産院で産むための基準はかなり厳しい。医療行為はできず正常分娩以外のお産ができないので、逆子、双子、早産、少しでもトラブルがある場合は即、提携している病院で産むということになる。そういった理由で、希望はあっても途中で病院に、となる人も多い。直前でも出産途中でも何かあれば、なじみのない病院で産まなければならない。だから私は、少しでも体調を悪くしたり早産になることは避けたかったし、めちゃくちゃ気をつけてやっとやっと、助産院での出産にこぎつけることができた。
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出産はアットホームな場所で、心地よく行われ、すごく良かった。夫と考えたバースプランでは、お風呂で水中出産ってことになってたけど、思ったより出産が進むのが早くて「もう移動できん・・・ここでいいです!」とかわいい部屋のベットの上でフリースタイル出産することになった。どんな姿勢をとってもよく、気張るよりも息をは~っとはいてリラックスしながら産んだ。一息、一息はくたびに、息子が降りてくるのが分かった。

妊娠中、絶対安静になってからは寝たままできることがなかったので、出産だけでもよりよくしたい、と思って、毎日おなかの子供に話しかけた。「する~っと降りてきて、くるくるぽんって産まれるんだよ~、お母さんと息を合わせてしようね」とイメージトレーニングもしてみた。そしたら、本当に息を合わせたように降りてきてくれた。息子は、助産婦さんたちに見守られながら、夫のあったかい手のひらの上に生まれてきた。

■どんな風に産まれても、すばらしい誕生の価値は変わらない


色々な人と妊娠出産の話をしていると、本当に多種多様だ。病院で産んだ人、帝王切開した人、自然出産した人、助産院で生んだ人・・。でも、意外とお母さんが「うちは帝王切開で、普通に生むことができなくて、子供に申し訳なくて・・・」というように、産んだ時のことで罪悪感をかかえている場合が多い。私自身も、全然うまくいかなかった妊娠期に「申し訳なさ」はすごく感じた。

もちろん「こういう風に産みたい」という理想はあってもいいし、選ぶことは大切なこと。だけど、それがいつしか「こうじゃないといけない」「これが正しい」となりすぎると、あとで苦しむ。こだわりを持つのはいいけど、こだわりに煩わされない自分を持つことも同じだけ大事なこと。

最終的に、どこで生まれても、どんな風に産んでも、大切ないのちの価値に何の変わりもない。
お母さんの価値にも、親子の愛情にも、何の変わりもない。全て、すばらしい誕生の瞬間だ。
おめでとう。ここに来てくれて、ありがとう。
これだけは、みんなに伝えたいなあと思う。

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