■田舎暮らし体験ハウス

高知県嶺北地域の移住支援NPO「れいほく田舎暮らしネットワーク」が今年度から新たに「田舎暮らし体験ハウス」をはじめる。その一軒目となる場所に、画家の川原将太さん(大阪出身)がプチ移住し滞在中。どんな暮らしをして絵を描いてらっしゃるのか、訪ねてみました。(田舎暮らし体験ハウスは、他にも随時、魅力的な田舎暮らし体験ハウスを増やしていく予定。)

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田舎暮らし体験ハウスは、こんな場所にあります。眺めがいいな~
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母屋が短中期滞在向けハウス。
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こちらが川原くんが住んで絵を描いている倉庫。中長期滞在者向け。
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川原さんは、画家。作品を描きためては、アメリカや海外のギャラリーで展覧会で発表している。
彼は、絵を描くために早寝早起きで規則正しい毎日を送っている。
「朝6時~夜12時ごろまでずっと描いてることもある」それほど描くことが生きること、という人。
ごはんを食べ忘れて没頭してしまうこともあるので、意識的に「食べなきゃ」と思って食べるくらい。

■川原さんの毎日


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最近は、ひとつのテーマの作品作りが一旦終わり、次の作品に移ろうとしている時期。
なので、いつもとは違うことをしている。野菜を育てる、コーヒーを飲む、掃除をする、色々と調べる、絵の構想を練る・・・。以前は、ずっと描いていないと不安だったが「今はアイデアを待つしかない」と思えるようになって、比較的余白を楽しんでらっしゃるように感じた。



私自身もそうだが、表現者にとって一番怖いのは、もう何も湧いてこないことかもしれない。
でも、そこでぐっと手を一度とめて、「待てる」余白は、自分自身や世界への信頼ともつながり、
忘れて他のことを一生懸命している時にふと出てくるものに遭遇したりする。


絵描きはほとんどの時間をひとりで絵を描くことにささげているので、「孤独」なことも多い。
だけど、誰も答えは持っていなくて自分の中をみつめるしかない。
それを分かってやっているのがすごいなって思った。

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基本的に川原さんの絵は、明るくてポップ。楽しい色、明るい色、そして抽象的な形。DJが音やメロディーをミキシングしていくように、コラージュしていくような感じ。これは、安心して壁に飾れる絵だ。精神的に乱されない。安定感と清涼感がある。季節ごとに掛け変えたい絵だなあと思った。


■絵を描くことは何?

絵を描くことって河原さんにとって何なんですか?と聞いてみると、「「Who am I?」自分が何者か、を自分に問いかける時間です」という。「産まれて来たからには、自分の役割を果たすのが当然だと思ってる。自分ができることで、世界に何ができるか?自分の場合は絵を描くことが役割なので」

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それはよくある自分探し、というニュアンスのものではない気がした。
もっともっと現実的で、絵を描くことで内面へと旅する感じ。
普段生きていて、ここまで情熱をあらわにしている人はなかなかいないので新鮮だ。

■絵描きって、孤独だけど幸せ


彼は、小さな頃から何となく「自分は旅の絵描きになるんだ」と思っていたという。
とはいえ、高校生までは、普通の高校に行き、ラグビーにはまっていた。
大学で京都市立芸大の美術科・洋画専攻に。そこでは、皆がアートの話ばかりしているのに驚いたらしい。でも、絵筆を持って描く時間は誰よりも長く「いつもアトリエにいる人」だった。

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卒業してからは、本当に旅の画家として海外を回り、現地で絵を描きながら生活していた。
実際に世界を周ってみると、ヒッピーっぽい暮らしをしている人や、趣味で絵を描いて周ってる人はいても、マジで彼のように旅の画家をしている人は少なかったそう。意外で面白かった。川原さんを見ていると、本当にこの人は「生まれながらの画家」なんだなあと思う。私も芸大出身だけど、ここまである種ストイックに描くことが生活の中心になるほどの人はそうそういない。

■「夢は現実でかなえるもの」という前提は共有されてない


高校生のころまでって、夢を語るじゃないですか?僕も本気で夢を語ってそのとおりに旅の画家になったんです。でも、周りの友達は、あんなに語ってた夢は現実とは別物ととらえて、全然違う進路を選んで行く。

それを見て「あれ?」ってなりました。「みんなあれだけ言ってたのにやらへんの?」って。
自分の「夢」に対する感覚は他の人の捉え方と全然違ったんだって気がついてびっくりしました。

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確かに、と私も思った。自分自身の中には、「夢は現実でかなえるもの」という前提がある。だけど、皆がそうではない。夢というとふわふわ~っとした甘いイメージもあるけれど、実際に夢を現実で実行していくにはリスクもともなう。アートでも、経営でも、どんな分野でも結果が失敗に終わったときの責任も覚悟も必要で、厳しい世界だ。


そして人に認められようと認められまいとやるのだから、忍耐もいる。新しい道を開いていくには、泥まみれになりながらも、幸せを感じて進むくらいのバイタリティもいる。


■「好きなことして生きていく」なら絵以外のことで得ちゃダメ。という自分ルール




川原さんは、実際に絵で生きていくと決めたからには「絵で食べる」ことへの覚悟を持っている。
「好きなことだけして生きていくって言いますけど、それならバイトもしちゃだめ、絵以外のことで得ちゃだめ。そういう決まりを自分の中に作ってます」という。
この言葉には、かなりハッとした。

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実際、日本にはアートのマーケットが育ってないため、芸大を卒業してから画家としてやっていける人はほとんどいない。最初はバイトと両立しながらやってみる人とかもいるんだけど、だんだん離脱していく。


生活費を聞いてみると、びっくりするほどミニマムだった。月5万ちょっと。そして絵が一枚売れれば、カバーできる金額だ。彼の、「捨てるものを捨てる潔さ」と「絵を描くことにまっすぐにエネルギーを注ぐ姿勢」がすごいなあと思った。彼は、今までどんな国や場所にいても、応援してくれる人に恵まれるのだそう。確かに、こういう姿勢があちこちに垣間見える人って応援したくなるし、生きていて欲しいんだよね。世界に必要な存在だと思う。



私自身も、アートと日常をつなげながら、どうやって自分がやりたいことをして食べていくか?
芸大の時期に結構ストイックに考えた結果、お菓子のネットショップやカフェというツールにアート性をひそませることにした。0から始めて今まで何とかかんとか、世界観を表現しながら同時に経済も得てきた。自分で「これで食べていく」と決めると「じゃあどうするか?」を考えるものだ。


バイトではなく好きなことではじめて一万円稼いだとき「こんなに大変なことなんだ・・・」と思ったことを覚えている。そして同時にめちゃくちゃ嬉しかった。自分で道を作るのは、本当に大変なことだけどそれだけの充実感があり、そのためのリスクは引き受けようと思った。

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若い頃は「いいね~あなたは、こんな風にできて。私は選べなかったから・・」とわざわざ言ってくる人や、「私もそうしたいけど、お金いるし・・・」「友達とのつきあいもあるし・・・」「彼氏がなんていうか・・・」なんて出来ない理由ばかり探して言う人に対して、ひそかに「甘い」「ぬるい」と思った時期もあった。(言わなかったけれど)



今は、彼らには彼らの方向性での覚悟や、忍耐があるんだなあと思う。大切なことやリスクと感じることの種類や優先順位が違うだけ。自分に出来ないことをしてくれている。地道に毎日コツコツやってくれる人たちがいて、それとは全く別のアーティスト的な人もいて、世の中が成り立つ。それに対して感謝と敬意を持ちたいなと思っている。



「スポーツでは金メダル以外の人は生き残れないのと似ていて、画家も経済をともなわせるのは永遠の課題ですよね」と川原さんは言った。「でも、そこを見つけていきたいね、あとに続く人のためにも」と二人で話した。こんなに古典的な「画家」という人に会ったのは久しぶりだった。

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■著作エッセイ漫画
山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ 山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ [コミック]








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自然派菓子工房「ぽっちり堂」
山の素材で手作りした優しいお菓子ギフト。