地中にもぐっていたものが咲き出す時期


高知の山奥に移住して8年がたちました。
今の季節、山を歩くのが好きです。

冬は全くそのすがたが見えず、枯れたように見える植物たち。


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中には、育つものもいれば育たないものも。一年たって、球根を増やしたものもある。色んな種があり、色んな花になる。
それが、目に見えてぶわ~っと出てくる。
さっきまで静かだと思っていた冬山に突然勢いが出てきて、あたり一面が花で満ちてくる。そして春が来たなあって悟る。


これって、どこか人や地域と似ているなあと感じるんです。
ひそんでいた種が開花していくように、例えば移住してきた人にも、
何年かは地中にもぐるような時期があります。
その時期には、ふんばりながら自分たちの暮らしを育てていきます。
そしてやっと、その成果が目に見えてくる時が来るんですね。



花を咲かせるにはどうすればいい?
その人が自分で立つこと、周りができること。

育つ場

自分自身の失敗も成功も振り返ってみた時、「自分で育とう、花をさかせよう」と思わないと、最終的には育たないものなんだなあと感じます。

これは移住・子育て・暮らし・仕事などで共通すること。
「覚悟、責任、意思」を自分の中にしっかりと持ったとき、種が土にもぐり、根を伸ばすことができます。


今は「地方創生」が謳われているにしても、地方暮らしはまだまだ稀有な道。地元の人だって「大変だ」と言いながら生活を成り立たせているくらい。本当はもっとハードルが低かったら良いけれど、切り開いていくにはある一定のたくましさも必要です。


当然ながら、地域に入ってうまくいく移住者も、そうでない人もいます。
その人達に対して「周りができることってなんだろう?」と考えたら、
私はやはり「いい種が育つ場を作り、見守る」ことだなあと思うのです。
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その人自身の力があることを信じ、その人なりのプロセスがあることを理解し、余計な手出しをして依存的にならないようにバランスをみながら。時には悩みや喜びも分かち合いつつ、必要なサポートで自分が出来ることがあればする。その人が自分自身の足で立つことを見守る。(適度というのが難しいんですけど)


また、種と土は合うこともあれば、合わないこともあります。
この組み合わせの妙は、種が悪いとか土が悪いとかじゃないんです。
要は「自分に合う場所を選び、自分で根をはり、自分なりの花をさかせてゆけるかどうか」
最終目標は、その人が幸せになれること。地域が良くなること。
それだけであって、それが出来る道を探そうってことです。


運よく様々な種も育てば、見たことがないくらい花がいっぱいで調和のある景色ができる事もあるかもしれないですね。

調和


大事なのは、誰も「こうすれば絶対にうまくいく」という答えは持っていないということ。



最近よく思うのは、地域で活動している人も、移住支援をしている人も、行政も、都会からの移住希望の人も、あなたも、私も、みんな「正しい答え」は持っていないってこと。


誰だって正解は欲しいし、あればラクです。だけど、ない。
国の体制、色々な事情、背景が複雑にからまって今の状態にある「地方」という分野では特にそうです。


その中で皆一生懸命より良いやり方を考え、これからのあり方を探しながら歩んでいる。それを理解して、うまくいってもうまくいかなくても、誰かを責めるのではなく、それぞれが「よりよい答えを作り出してゆく」こと。
「お互いにその気持ちは共通している」と信頼し合ってやっていけたらいいなって思います。


特に地方では人材が少ないため、1人のリーダーに対して沢山のことが求められ負担が大きくなりがち。だけど何もかもできる人なんていないです。だからこそ、地域に生きる一人ひとりが、自分の持っている力を出すことが必要なんです。

「してくれて当たり前」「当然用意してもらえる」と思わないマインドで。
「自分が欲しいものは、自分で作る」がもたらすフィールドの豊かさ。

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今では特に、地域創生の影響もあって、全国の地方が移住支援の体制を急いで整えつつあり、場所によっては特典合戦も起こってます。そんな状況の中では稀に「もちろん、これくらいのことはしてくれるよね」と思ってしまう移住希望者がいるのもわかります。


だけど、地方で住んでいて思うのは、「相手が何かを用意してくれるもの」という意識では切り抜けていけないことがある。そういう目線でみれば地方なんて「やってくれない」「これが足りない」ことばっかりです。

それでも、その地域に興味や魅力を感じ、そこで暮らすということは、
「与えられるのを待つ」のではなく「自分で必要なものを作っていく」という意識が必要。



今は、当然のようにそこにあるカフェも、パン屋さんも、本屋さんも、以前はなかったもので、ある時誰かが「この地域に必要だ」「ここに、こういうものがあれば」と勇気と資金を投じて作ったお店かもしれない。

今、「当然ある」と思われている、移住支援のしくみだって「自分たちが困ったから、作ろう」「あのとき皆に助けてもらったから、今度は自分が必要なことをやろう」「みんなで暮らしやすいようにネットワークをつくろう」と自分たちで手弁当から作り上げてきたものかもしれない。




だから、もしあなたが思いついたことがあるなら
「あの人はそれをやっていない」「もっとこうして欲しいのに」
というばかりではなく、自分から思いついたことをやってみてほしい。

あなたが欲しいものは、みんなが欲しいものかもしれないから。



それが、地方や移住、まだ答えが出ていないもの全てに対する「幅の広い受け皿」を作っていきます。生き方も、働き方も、都会でも田舎でもそうですが、今の時代答えは一つではなく、たくさん豊富にあるほうが良い。


それが世の中に、多様で美しい景色を作っていくのだと思います。
そして「その景色を作れる一人が自分である」ということを実感できるのが、地方で生きることの面白さなのだと実感しています。



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移住希望の方への窓口と移住者同士、地元をつなぐネットワーク作りをしているNPO。

■私、ヒビノケイコの著書。高知の山奥で暮らしながら新しい時代のあり方を創造中。


山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~
山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ [コミック]







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