「地域の名もない偉人」インタビュー
私が暮らす高知県嶺北地方には「名もない偉人」がたくさんいます。地域創生や大手マスコミでは報道されないけれど、地域のことを考え、自分ができることをしている人達。地域を本質的に元気にしていっているのは彼らです。そんな人の存在を一人でも多くの人に知ってもらいたくて、インタビューをすることにしました。
今回ご紹介するのは、同じ土佐町で暮らす「やっちゃん」こと谷泰久さん。
昨年には日本唯一のキッズアドベンチャーレース合宿を企画、地元住民が演じるお笑いライブを毎年主催。
固定化されやすい地域に多角的な場を作ること、どんな子にも光を当てる大切さ、スポーツを通してコミュニケーション能力を育てること。
面白いお話をvol1~3シリーズでお届けします。
谷泰久
1976年生まれ。高知県土佐町出身
明徳義塾高校・広島YMCA健康福祉専門学校卒.
元・マウンテンバイクのクロスカントリー競技「エリートライダー」
アンダーU23の世界選手権のスウェーデン大会の日本代表。
24歳で土佐町にUターンし、現在地元住民のお笑いライブやスポーツ企画をする若者団体「A-TEAM」代表。
子供達に楽しくスポーツを教える「a-team kids club」代表。
「なんでUターンしたの?」
ヒビノ)やっちゃん、今日は色んなお話聞かせてください。やっちゃんとはうちの夫が同級生で、私ももう10年くらいの付き合いになるけど、勢いのある仲間がいてくれてすごく心強いねん。そもそも、なんで土佐町にUターンしようと思ったの?谷)一回県外に出て、いろんなこと学んで、それを持って帰ってこようと思ったがね。
ヒビノ)じゃあ、地元は好きやったんや。
谷)いつか帰ってきて、色んなイベントをやっていこうと思ってたんよ。
レイホクゴロワーズと、キッズスポーツクラブ作ることと、お笑いライブとかやりたかったしね。そのために色々準備してたね。
↑選手時代。
左)初代オリンピック金メダリストのバルト・ブレンチェンス
左から二人目)元世界チャンピオンのフィリップ
右)エクストリーム界の天才ショーン・パーマー
キッズアドベンチャーレース「レイホクゴロワーズのこと」
2014年にやっちゃんの企画で初開催されたキッズアドベンチャーレース「レイホクゴロワーズ」
高知県嶺北地域の川や山をフィールドに、小学生たちが集まり、チーム戦で競技する2泊3日の合宿。種目は、ラフティング・カヤック・マウンテンバイク・トレイルラン・ロッククライミング・アクティビティ(フライングディスクや廊下奪取、スラックライン)
先生は地元に住んでいる選手、スタッフは保護者や地元の方々。うちの息子も参加し、とても素晴らしい体験だった。これが、地元から内発的に出てきているすごさを感じた。
多種目を競技することで、責める気持ちが補い合う気持ちに変わる

ヒビノ)ゴロワーズ、めっちゃ面白かったけど、やっちゃんはどんな場面が印象的やった?
谷)カヤックかな。
水の上では女の子のほうが得意。すいすい~っていくのよ。
男の子のほうが、体が固くなって苦手。
だから昨日まで、他の競技では女子より強くて女の子に「お前早よやれ!」ってえらそうに言いよったのが、
今日は自分がなんもできんなってるから言えんなる。
ヒビノ)あはは、なるほど。で、何か変わる?
谷)次の日は自分がなんもできんかったっていう気持ちが残ってるから、
ランとかマウンテンバイクで女の子が遅かろうが、文句言わんなる。
責める気持ちが補う気持ちに変化する。
それって、社会人になっても人がミスした時にいちいち責めるか、ケアできるかにつながっていくと思う。こういうのは単体の競技ではなくて総合的に色んな競技をやるからこそ。
それぞれ得意なものも苦手なものもある中で見えてくるんよ。
ヒビノ)そっかあ、すごいなあ。それで色んな種目の競技をやっていくねんな。2泊3日、4町村から子供達が集まって、チーム戦でできたのも良かったよね。
谷)昨年はれいほく中からやったけど、今度は高知中から集めたらまた違って面白いと思いゆうがね。
こどもたちのリーダーシップ
ヒビノ)チーム戦にはリーダーがいたよね?
谷)リーダーはあらかじめ、年齢とかで僕が選出してる。
年上の子がまとめ役として戦術とか話し合っていく。
これは、コミュニケーション能力の向上とか、リーダーシップの勉強になる。6年生が急遽来れんなって、4年生のSくんがリーダーになったチームが一つだけあったがね。
学年は一番下で、6年もおらんかったからハンデもあったんやけど、一番リーダーシップを発揮したのはSくんやったねえ。
ヒビノ)どんな風にリーダーシップを発揮したの?
谷)誰よりもみんなを集めて、こういう風にやろうとか作戦をたててたよ。
こういう風に動こうとか、みんなを一番まとめてたなあ。
ヒビノ)リーダーもタイプがいろいろあるがやない?
谷)指示する系の子もいるし、みんなで話し合う系の子もいるね。
Sくんは、みんなの意見もきいたり、話しかけるというのが多かったね。
ヒビノ)そういうのって、ふだん場面がないとやることもないかもしれへんよなあ。場が与えてくれる、自分を伸ばすチャンスって感じやな。
金持ちの趣味&多大な手間がかかると言われる
「日本で唯一のキッズアドベンチャーレース」がなぜ嶺北でできるのか?
谷)そもそも、こういうイベントって今まで日本の中でもないんよ。
なんでかというと、めんどくさいき。
ヒビノ)めんどくさいが?
谷)ようせんのよ。ふつう。例えば大人がこれやろうと思ったら、個々に持ってるもんを持ち寄ってって感じになる。自転車とか、カヌーとか。でも、めっちゃそれにお金がかかってる。
基本的には金持ちの遊びなんよね。
マウンテンバイクとかレース用使おうと思ったら、バイクより高い。
これを、子供がやるってなったとき、まず何十人分も子供の自転車を準備するところからせないかん。さらにスタート地点に自転車を持っていっちょかないかん。
これ、おとなやったら簡単やけど、子供がやるとなると色んな人に協力してもらって先に準備しとかないかん。そういう手間がかかる。
人材と自然の宝庫
ヒビノ)なるほどなあ。
それってなんで嶺北やったらできるの?
谷)すべての環境があるんよね。
カヤックは、本山町と大豊町がもってるものをレンタル。
ラフティングは国体選手やった由美さんがいるし、ロッククライミングはセンターが近くにある。
マウンテンバイクは僕がもっちゅうのと他に持ってる近所の人のを借りたりね。一斉スタートができるほどは集まらんかったから順番にスタートしたり工夫もして。反省点もでたけどね。
ヒビノ)地域の資源として持っているものを活用して、という感じやね。
谷)アドベンチャーレースで、地域を横断していく。
大豊町でラフティングとエアガン、フライングディスク、レクリエーションゲーム。
本山町でカヤックとクライミング、土佐町では山の中でトレイルランと林道をマウンテンバイクで下ったね。山とか林道とかは、近所の人が協力してくれて3日ばあ掃除とか補修をしてくれて。
ヒビノ)すごいなあ、めっちゃ助かるなあ。
谷)林道、これ横ガケなんよ。これ1人でいかしたら危ないから子供1人につき大人1人横につけて走っていったんやけど、
アドベンチャーレースで冒険やから、あえてこの道を使った。
今回のイベントは全部で8~10人くらい当日スタッフが手伝ってくれた。
これ平日で大変やったんやけど。
ヒビノ)そんな平日に、皆手伝ってくれるなんて、ほんまありがたいなあ。
谷)カヤックとかは世界選手権の日本代表のニコちゃんが教えてくれてたよね。クライミングも、ゆみさん国体選手やし。
ヒビノ)そしてやっちゃんは、マウンテンバイクのクロスカントリー競技でエリートライダー。アンダーU23の世界選手権のスウェーデン大会の日本代表。・・・って、すごいメンバーやなあ(笑)贅沢すぎやろ!
谷)みんな、その世界では最先端、日本の一番上をみちゅう。
だから説得力がある。
ヒビノ)それは、やっぱり教え方に出てくるやろうね。
谷)教え方が本質的やし、間違いはないと思うんよ。
■続きを読む⇒お山の大将にならない大切さ。スポーツの目的はアスリート育成じゃなくて・・「谷泰久さん」インタビュー②
■「笑いは地域を救う」地域住民が出演するお笑いライブで、多層な人をつなげたい「谷泰久さん」インタビュー③
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