ブランドコンサルタントが、農家に。


鳥取、鹿野町で行われた「まち作り合宿」。そこで、東京から鳥取へ移住され農家になった「つぎこめプロジェクト」白川さんのプレゼンを聞きました。
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(出典http://tsugikome.wix.com/shirakawa-okome#!shop/c1z4x

白川さんのお話を聞いて、すごく感動したんです。
というか、まずはじまりのプロモーション動画があまりにも出来が良すぎておどろいちゃった。
「これを個人でやってるなんて、すごいな~この人は一体どんな人なんだろう?」と。
↓これ、その動画です。(5分弱です)


白川さんは、お米農家になる前、東京で「ブランドコンサル」の仕事をしてらっしゃったんですって。
関わっていたプロジェクトをお聞きするとどれもすてきなものばかり。
issuedesignとか、地域未来大学とか。



ブランドコンサルの仕事でやっていたことは、内部&外部関係者の共感形成。

共感を作るために、内部と外部での「コミュニケーション」の仕事をされてきました。



農家になった今は、内部コミュニケーションは企業内→地域内のコミュニケーションに。
外部コミュニケーションは、クライアント→都会のお米を食べてくれる人に。


白川さんは「田舎が元気じゃないと都会もいつまでも成り立たない」と思い、継承者を探していた今の米の師匠と出会ったことがきっかけで、鳥取で農業をすることに。

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空家問題ならぬ、空き田んぼ問題。「つぎこめプロジェクト」


白川さんは「つぎこめプロジェクト」を通して、次の世代へ継ぐ農業をしたいと言います。

今、空家問題がよく話題に上りますが、空き田んぼ問題もすさまじい勢いで広がってきています。
継承して欲しい農地を持っている農家さんは沢山いるけれど継ぐ人はおらず耕作放棄地に。

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(出典http://tsugikome.wix.com/shirakawa-okome#!shop/c1z4x


白川さんは言います。
「自分のお米をものすごく特別な製法で、プレミアムな高いものにはしたくないんです。
リーズナブルだけど、市場(スーパー等)の特売激安価格より3割増しくらいで売れるお米にしたい。そうして少しでも空き田んぼを活用できれば」とのこと。

そして、
「これから田舎で農家をしていくにあたって、お米を作る以外に大事なのは外部とのコミュニケーション」と言います。


白川さんは、直販のネット通販などでお米を販売されています。コミュニケーションは、デザイン、ブランディング、ネット、Hp、ブログ上での情報発信やコミュニケーション、サンプルをお送りすることなどなど。それを労働時間に入れていくことが大事だとのこと。

これからの農家の労働時間=「作る時間+コミュニケーションの時間」


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(出典http://tsugikome.wix.com/shirakawa-okome#!shop/c1z4x

今までの農業では「お米を作る+農協に出す」でやって来た人が多いけれど、それでは経営が成り立たない現状が。白川さんが農家の一年を通しての労働時間と収入のグラフを見せてくれたのですが、農繁期と農閑期でどちらも差がありすぎることにびっくり。

収入に関しては
「農閑期は厳しすぎてギャンブル的とさえ言え、もっとなだらかにしたい」
そして、労働時間に関しては「外部コミュニケーションにとっている時間が少なすぎて、これでは食べていけなくてもおかしくない」とのこと。新しいバランスを作っていきたいと考えてらっしゃいました。


このままではとだえてしまう仕事が、再復興できる可能性。


ここ、忘れがちなことですがとても重要なことだなあと思いました。

田舎で暮らしていると、「体を動かしている=労働」とみなされがち。
反対に、パソコンでどれだけ外部コミュニケーションや経営が成り立つために重要な作業をしていても「働いてない」とみなされて悲しい思いをすることがあります( ´_ゝ`)ノ


だけど、今の時代に田舎で何かを作って外へ販売していく、仕事を作るにあたってはネットを使った外部とのコミュニケーションはかなり重要。作っても、相手がいなかったら売れないから。



いわば、ネットはドラえもんの「どこでもドア」。
過疎地の家から、外の何万人~何億人とつながってる状態が手に入るイメージ。
一昔前だったら、近くにお客さんがいないからもうだめとか、大手流通に頼らないとダメ(でもその利益が少なくてダメ)とかだった仕事が、自分で直接つないでいける。


これ、とても邪険にはできない大事なこと。
ただ、これらの作業はかなり意識していれていかないと目の前の肉体労働に押されてしまいがち。
でも、作ったって売れなかったら生活を直撃することになるので最初から労働時間のスケジュールに入れておかないといけない。


外部コミュニケーションをうまく使えれば、昔だったら村内で「もう農家ではやっていけないよ」と頭打ちだった仕事が、今の時代のカタチで成り立っていく可能性が広がります。
農業が残っていける可能性が増えます。
その村で暮らす一人の人の、経済スペースを広げてくれます。


白川さんのように、自分でやっていく人が1人村にいることのすごさってハンパない。
バランスは難しいけど、がんばってほしいなと思います。


「コミュニケーション」はマーケティングよりもしっくりくる言葉。


マーケティングは大事だけど、お客さんを「ターゲット」と呼んだりするところは冷たい感じがしたり、
「生産者⇔消費者」というポジショニングが生まれたり、そこから分断がはじまってしまう気がして、なんかしっくりきてなかったんです。


そんな私にとって「コミュニケーション」という言葉は妙にしっくりきました。


「コミュニケーションとしてのデザインであり、ブランディングであり、ネットでの情報発信である」ととらえると、とてもいい感じ。それらは単なる消費者ではなく「仲間」を作るんですよね~、きっと。

いくら頑張ったって、大企業の資本力には負けるし、価格競争に陥れば確実に弱い。にわかプロや素人的な私達は、本職でそればっかりやっている頭脳明晰なプロのスキルには負けちゃいます。グローバル化が進む中、さらにそれは加速するでしょう。

競争より、差別化より「光る存在」を作ること。



だからこそ、田舎でネットを使いながら経営や活動をする人は、この「コミュニケーション」という言葉は大事だと思います。いっそ勝ち負けの構造の中に入らずに「唯一無二に光る存在になる」方が良いと思うのです。もはや差別化なんて超えて、表面的に真似したところで本質的には真似もできない存在感を作る。


光っている人、光っているものに、人は集まってきます。
これは、ビジネスでも移住でも地域でも一緒だと思います。



私たち夫婦が経営してきた自然派菓子工房ぽっちり堂ネットショップ(地元素材のお菓子工房。体と心にやさしい焼き菓子ギフト)でも、山奥のカフェになぜお客様が沢山来て下さったか、個人で素人がやっているお菓子の通販になぜお客様が注文してくださるのか?
今思えば、同じことだと思います。


1人で何役もこなすことの大変さも感じるけれど、白川さんが仰る「外部コミュニケーション」をしてきたことで1~3人が食べていける経済が生み出せるという実感があります。



白川さんに聞くと、実際にデータから計画してみると「農家の肉体労働+コミュニケーションのための時間」をとることは可能とのこと。ぜひ実現してこれからの田舎で仕事を作りたい個人に発信して欲しいなあと思います。

「田舎に一家族ぶんの経済スペースを作る知恵」を、全国つながって学び合えたら。


「コミュニケーション」経営、かなり重要な考え方だと思うし、白川さんなら多様な仕事に汎用性がある形で発信できる気がするんです。今の田舎に大事なのは、「同じように同じことをする人」を増やすだけではなく、「白川さんが気がついていることを翻訳して自分の仕事に生かせる人」を全国の田舎に作ること。

彼が農家として体現していくことの中には、そういうことも含んでいるように感じます。


田舎には仕事が少ないので、今ある受け皿に入れる人数は限られています。
そんな中で「沢山の人が従事できるだけの産業を田舎に作る」という事は、できれば良いだろうけど、今の変動が大きい時代ではかなり難しいこと。また、企業を誘致するのももはや古いし、持たない構造のような気がします。


そういった大きなことはそれなりの方にお任せするとして、私達のような個人ができることといえば、「田舎でも自力で経済的にやっていける個人」をひとり、ふたり、何千人、何万人と全国に増やすことじゃないかな?って思うんです。そんな足腰の強い個人が、全国つながって学びあっていけるといいなって。



きっと、白川さんのように「光っている」存在に人は集まってくると思います。
どこのお米と比較する訳ではなく「白川さんのお米だから食べたい、だから買いたい」と思う人が仲間になってくれる。それだけの人柄と、思いと、行動が伝わってくる素晴らしいプレゼン(コミュニケーション)でした。

子育て、就農したて、移住したてで色々あると思いますが、これからも応援してます!と、私がすでに白川さんのファンになってる事実・・・(・∀・)さすが、共感形成できちゃってますね(笑)


■すてきなHPです→「白川さんちのおいしいお米」
■ブログ→ど素人の新規就「農」ブログ


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講演(移住支援、地域活性化、キャリア授業)や田舎へのスタディツアーも行っています。
☆執筆、講演などお仕事依頼はこちらまで→
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■私、ヒビノケイコの著書。高知の山奥で暮らしながら新しい時代のあり方を創造中。

山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~
山カフェ日記~30代、移住8年。人生は自分でデザインする~ [コミック]